■本書はロンドンのジャパン・ソサイエティ図書シリーズBritish Envoys in Japan 1859-1972,Golobal Oriental 2004の邦訳である。初代から第18代に至るまでの歴代の駐日大使(1905年に両国の公使館が大使館に昇格するまでは公使)の略伝を収録。各章の原著者たちは,外交文書をはじめ各種の一級資料を駆使し,国際的条件と国内的条件が複雑にからみあう中で,歴史の流れに作用し作用されつつ生きた駐日外交代表それぞれの姿を描出。
■戦前の駐日英国使節と言えば,初代オルコック,日本に18年もいたパークス,日本学者のサトウ,日英同盟のときのマクドナルド,陽気な人格者だったピルチャーなどが頭に浮ぶが,それ以外については馴染みが薄い傾向にあった。しかし,本書のように歴代の使節を年代順に並べてみると,幕末から最近に至るまでの日英間の政治,経済,文化等の交流の過程がよく分かる。親日家あり,そうでない者もあり,それぞれの個性が表れて誠に興味深い。それを通読すると幕末以来百十余年の日本と英国の関係の変遷がよく理解できる。本書は日英間相互の理解と親善をなお一層深める役に立つであろう。
■本書の出版と時を同じくして日本の歴代駐英大使列伝 (The Japan Society Series Japanese Envoys in Britain 1862-1964: A Century of Diplomatic Exchange, Compiled and Edited by Ian Nish, Global Oriental 2007)が英国で出版され,日英の大使列伝が出そろった。世界的にも例のないことであろう。
■収録された歴代駐日英国外交代表
1859-62 サー・ラザフォード・オルコック
1862-64 エドワード・セントジョン・ニール
1865-83 サー・ハリー・パークス
1884-87 サー・フランシス・プランケット
1889-94 ヒュー・フレイザー
1894-95 パワー・ヘンリー・ル・プア・トレンチ
1895-1900 サー・アーネスト・サトウ
1900-12 サー・クロード・マクドナルド
1912-19 サー・ウィリアム・カニンガム・グリーン
1919-25 サー・チャールズ・エリオット
1926-31 サー・ジョン・ティリー
1931-34 サー・フランシス・リンドリー
1934-37 サー・ロバート・クライヴ
1937-41 サー・ロバート・クレイギー
1946-51 サー・アルヴァリ・ギャスコイン
1951-57 サー・エスラー・デニング
1957-59 サー・ダニエル・ラッセルズ
1959-63 サー・オスカー・モーランド
1963-67 サー・フランシス・ランドール
1967-72 サー・ジョン・ピルチャー